春のせみのような

いつまでも寒さが残ってるなぁと思っていたら、今日はものすごく暑くて、夏のように日差しも厳しかった。桜はもうだいぶ散ってしまっている。小鳥が花の蜜を吸っているのか、桜の花の周りで甲高く鳴いていた。ベンチで少し休んでいたら、どこからともなくアゲハチョウがやってきた。アゲハチョウは僕の視界を横切るようにふらっと近寄ってきて、すぐに遠のいてどこかへ消えてしまった。

夜になって風がひんやりと心地よくなった。風に当たっていたら、なにやら、ジーーという虫の鳴き声が聞こえてきた。春の夜に、鳴くような虫がいるんだろうか、と驚いてしばらく耳を傾けていた。その声が聞こえてくるほうに行ったら、確かに鳴いている。なんの虫なのかはわからない。でも、印象としては、せみの鳴き声のようだった。すっかり散っているとは言っても、まだ桜も残っている春にせみが鳴くことがあるんだろうか。あまりに暑くて間違えてしまったのか。真夏の夜に鳴いているせみも異様だし可哀想だけれど、春に鳴いているのだとしたら、それもまたなんとも言えない不思議な世界に迷い込んだような感覚になる。

それから、ほんとうにせみなのかなと思って帰って調べてみたら、3月末から4月半ばには鳴き始めるハルゼミというせみもいたが、このせみとは鳴き声が違い、どうやらクビキリギスというキリギリスの仲間のようだ。春から初夏の夜に草むらなどでジーーと鳴いて、せみと勘違いしやすいという。動画で鳴き声を聞いてみても、多分その子じゃないかなと思った。でも、この辺りでこれまで鳴いていたのを聞いたことがなかったように思う。